小室みつ子 / 映画とかドラマとか戯言など

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アカデミー賞・昔話

 WOWOWアカデミー賞の様子を見ました。作品賞には疑問を感じるけれど、やっとやっと監督賞でオスカーを手にしたスコセッシ監督の涙まじりの笑顔にもらい泣き。もっともっと前にオスカーを手にしていてもいい監督なのに。『ディパーテッド』は彼にとっては最上の出来とも思えない。本人もそう思っていたから驚いていたようだし。


 まず『ディパーテッド』製作中は「怒りでいっぱいだった」とインタビューで漏らしていた監督。プロデュース側がキャスティングでジャック・ニコルソンを抜擢したために、ニコルソン用に脚本を書き直さなければならなかったことも怒りのひとつのようで。日本に来た時のインタビューを読んでも、なんだか嫌々作っていた雰囲気バリバリでした。『タクシードライバー』『グッド・フェローズ』『エイジ・オブ・イノセンス』みたいな、本当に丁寧に愛情いっぱいに作られた作品ではないのは、なんとなく画面からも漂っていたような気がします。


 私は『インファナル・アフェア』を先に見てしまってるので、この映画を新鮮に見られなかったからなんとも言えないけれど…。スコセッシの代表作になるのはちょっと残念。ギャング映画が得意な監督だけれど、『エイジ・オブ・イノセンス』みたいな映画も撮れる。私はこの映画が大好きです。ミッシェル・ファイファーの美しさといったら…。そしてウィノナ・ライダーの天使のような無垢な少女の表情の裏に、恐ろしいほど冷静な女のしたたかさと強さが隠されていた。それが露になった時、映画の主人公も観客も震撼したはず。実に文学的で深みのある美しい映画でした。あの映画で私のスコセッシへの見方がかなり変わったと思う。


 それからアカデミー賞で驚いたこと。去年亡くなった映画人たちを紹介するコーナーで、ジューン・アリスンが去年まで健在だったこと…。子供の頃名画座に入り浸っていた頃に見た女優さんで、1943年『ガール・クレイジー 』が映画デビューらしいです。私が彼女を見たのは『若草物語』や『グレン・ミラー物語』。その頃すでに大スターだったけれど、特に華やかでもなく美しい人でもなかったので、当時の映画に出ている女優さんの中では異色に見えました。でも動いてしゃべる姿を見るとその魅力がわかる。そういう女優さん。すっかり記憶の奥底に埋もれていた彼女の名前と顔が一瞬にして蘇りました。享年89.大往生です。キャサリーン・ヘップバーンも確か3年くらい前に他界したけれど、彼女も90歳近かったはず。すばらしいです。


 一方で悲しい驚きもありました。中学生の頃『小さな恋のメロディ』というイギリス映画が流行りました。当時女の子を夢中にしたきれいな男の子、マーク・レスター主演の幼い恋の物語のひとつひとつのシーンを、The Bee Gees の数々の名曲が彩り、なんとも言えない愛らしくロマンチックな映画でした。男子の間ではその映画を好きな女の子を誘って見に行くというのがブームだったらしいです。ある日、私は上級生の女生徒たちに呼び出され取り囲まれて質問をされました。「○○くんから誘われてない?」「××くんは?」とか「誰と行くつもり?」と、ほとんど詰問。怖かった…。誰にもそんな誘いを受けていなかったのでただただ否定してたら解放してくれたけれど。そのくらい日本中の中学生を夢中にした映画だったという話。映画よりオリジナル・サウンド・トラックは今でもお勧め。3兄弟のうち一人が亡くなってしまったけれど、The Bee Gees は永遠です。名曲ぞろい。

小さな恋のメロディ ― オリジナル・サウンドトラック

小さな恋のメロディ ― オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ,ザ・ビージーズ,クロスビー,スティルス,ナッシュ&ヤング,リチャード・ヒューソン・オーケストラ,リチャード・ヒューソン・オーケストラとコロナ・スクールの学生,リチャード・ヒューソン・オーケストラとバリー・ヒューソン,コロナ・スクール,バリー・ヒューソン
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 で、これは前ふり。私がアカデミー賞を見ていてショックを受けたのは、その『小さな恋のメロディ』に出ていた悪ガキ役のジャック・ワイルドの名前が出てきたから…。彼はその後に同じくイギリス映画『オリバー』にもマーク・レスターと出演し、その卓越した演技が認められてアメリカのアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたこともあります。私は『小さな恋のメロディ』の淋しがりやの悪ガキぷりに惚れて、一時期ジャック・ワイルドに夢中になったものです。くりっとした大きな目に、大きすぎる鼻、決して美形の類ではなくどちらかというと奇妙な顔とも言える。実際より幼く見えてしまう小さな身体から溢れる力強い演技力に魅了されました。下のポスターの左側がJ.ワイルド。


 その彼が死んでいたなんて…。まだ若いはずなのに…(享年53でした)。ネットで海外のニュースを検索したらジャック・ワイルドの訃報記事が載ってました。『オリバー』の後、テレビ番組でも大活躍していた彼も、その後演技にムラができ低迷。0年代、80年代は酒に溺れる毎日だったようです。そして2000年に口内のがんが発見され、声帯と舌を切除する手術を受け、過酷な戦いをしていたそうです。その記事に載っている実年齢より年老いて見える男性には、私が恋したジャック・ワイルドの面影はありませんでした。でも、あのクソ生意気な口調で誰かとぶつかったり、そっと悔し泣きしていた幼い悪ガキジャック・ワイルドは今でも私の心で生きてます。遠い初恋の人の訃報を知ったような気持ち…。


 …と、私より若い世代にはさっぱり通じない話ばかり書いてしまいました。アカデミー賞で歌うセリーヌ・ディオンを見ながら、「彼女ってバーブラ・ストライサンドの後継者みたいな存在だよね…」と私がつぶやいた時も、夫に「誰?バーバラ?」と聞き返されました。「違う、バーブラ映画女優でもあり、すばらしい歌手だったけど引退した人」と説明するも、ああ、もうバーブラ・ストライサンドの名前さえ通じないんだ…とちょっと淋しくなりました。まあ夫はテクノ系がメインだし何より若い…。私はなんでも聴くほうだし時代ごとにすべてのジャンルを聴いてきたつもりだけど。今、夫と共通に好きなのはMOBYです。MOBYだけは私が先に見つけた。数年前に誰かわからずライブ見て夢中になりました。そしたらアメリカではビッグ・スター。というかクラブシーンではかなりの重鎮。アルバム馬鹿売れ。なのに日本では知名度低い…不思議。「Lift Me Up」が今うちの旬です。

 と、話がずれた。バーブラに戻すと、単に歌がうまいのではなく、卓越した表現力が彼女の魅力。力強くシャウトする圧倒的なボリュームのある声もいいけれど、バーブラは抑えるところはとことん抑え、ささやくように歌うかと思うと高らかに高音を駆け巡るように歌える。自由自在に声をコントロールし、聴く者の心を揺さぶられた。女優としてもロバート・レッドフォードと共演した『追憶』は傑作です。主題歌は映画やバーブラを知らない人でも、耳にすれば絶対に知っている名曲『The Way We Were』。

追憶 [DVD]

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 新作映画を追いかけるだけでも大変なのに、昔の名画を見る機会は若い人たちにはなかなかないとは思うけれど、本当にいい映画は今でも見続けられてる。『ブレード・ランナー』とか『エイリアン』とか『未来世紀ブラジル』、エポック・メイキングな映画は特に(みんなSFだしあんまり古くはないか…)。どんな古い映画でも置いてある巨大レンタルDVD屋さんが近くにあるといいのにな…。


 ふと思うまま、昔話をしてしまいました。古過ぎて誰も知らないでしょうけど…orz たまには昔を振り返って書いてみたいのです。で、最近は、夫とふたり『ロスト』にハマっています。まだシーズン1を借り始めただけだけど。他に「CSI:マイアミ」「CSI:NY」もかかさず見てます。どれもいいドラマばかり。だけど、ふと『ER』の初期の頃を懐かしく思う。あれほどに夢中になったドラマは未だない。グリーン先生が好きでした。結婚したいくらい…(既婚者ですが、私の褒め言葉は「結婚したい」なのです。なぜか(笑))。MOBYもそんな感じ。ライブでいっぺんにハマってしまったんだけど、優しい目、穏やかな口調、美しい旋律、斬新なリズム、豊かな創造性、すべてが揃っている人だと思う。関係ないけど、グリーン先生もMOBYも禿げてる……。私が好きになる有名人は何故か禿げが多い(エド・ハリスとかケヴィン・スペイシーとか)。不思議だ。

 おまけ。Love, MOBY!ライブDVD。

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