小室みつ子 / 映画とかドラマとか戯言など

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 エイジレスな女優たち

 最近「エイジレス」という言葉をよく見ます。ELLE とか FIGARO とか好きな雑誌なのですが、今月の ELLE は38歳から50歳くらいまでの年齢で未だに若い人に負けない美貌や肢体を持つ女優さんやモデルさんの特集をやってました。デミ・ムーア筆頭に。そこで当然整形などの話題も出てきて、デミが「雑誌は嘘ばかり。私は整形なんてしてないわ。みんな、私が年齢相応に老け込んだ姿を期待してたから悪口書くんだわ」とぼやいてました。本当に彼女はきれい。『GIジェーン』大好き! (…でも、寝ても形が変わらないあの巨乳は本物とは思えない…ぼそ)。


 女優じゃなくたって女はいつまでも若々しく美しくいたいと思うのは自然なことですが、特に女優さんは顔や身体をスクリーンに晒すのだから気にするのも当然。「あーあの女優も老けたね、終わりだね」なんて、見も知らぬ人たちに言われるのって嫌でしょうね。女優だけじゃなくメディアに出る人の宿命ではあるのだけど。それだけで落ち込んだりする人もいるだろうし、整形をして気持ちが前向きになれるのなら、整形も悪くないとも思う。


 …ただ、最近映画見てて思うこと。たまに能面に近い無表情な女優さんがいると気になるんですよね。うーん、眉が全く動かないって不自然過ぎる…て。ボトックス打ってるんだろうけれど、女優さんがあれをやりすぎるとちょっとつらいなあ…って思ってしまいます。私自身、そろそろ目の周りの笑い皺が気になりだして、ボトックスってどうかなあ…なんて思ってネットで調べたりしたこともあるので、それをやりたくなる気持ちは女としてものすごくよくわかるんだけど。


 ボトックスは皺を消すだけじゃなくて、顔の表情筋を麻痺させて動かなくするみたいなんで、演技をする人にはあまりしてほしくなかったりします…。勝手なファンの言い草ですけど…。いや、一般人であっても目や眉が動かないのは妙です。それに顔に注射というのは神経損傷とか事故のリスクもある。だからプチ整形なんて気軽そうに聞こえるけどやっぱり実際やるにはかなり勇気が要りそうです。それでも若くありたい気持ちは理性と欲望の間でさまようのですけどね。


 以前『トゥー・ウィークス・ノーティス』というコメディ映画を、主演のヒュー・グラントサンドラ・ブロックのコメンタリーを聴きながら見たことがあるんですが、サンドラがあるシーンを見て「あー自分のこういう表情見ると、私、ボトックスのこと考えちゃうのよね」って言っていてびっくりしたことがありました。びっくりしたのはボトックスへの言及ではなく、サンドラが嘆いたシーンの彼女の表情がごくごくわずかな表情皺だったから。ちょっと眉を寄せただけで眉間に出た皺はごく薄く自然なもの。ええ? このくらいでも気にするの…!?と驚いたのです。


 たぶん、彼女が気にしてるのは皺自体ではなくエイジング(トシを取るということ)自体なのかもしれないですが…。彼女が気にする必要など全くないほど、その映画の中でのサンドラ・ブロックはかわいかった。『スピード』で初めてサンドラを見て以来、彼女が出てる映画はほとんど全部見てるくらい大好きな女優さんなので、その異様な気に仕方が気になって頭の隅にこびりついてました。眉をひそめたら皺が寄るのは自然なことでしょうに…。


 …で、去年、サンドラ・ブロックキアヌ・リーブス主演の『イル・マーレ』という恋愛映画を見たら、サンドラの顔の上半分が動かない……。悲しい場面も嬉しい場面もあまり表情が変わらない。というか無表情……。眉が動いてない!? ああボトックス打っちゃったのかな…と淋しくなりました。サンドラ・ブロックだけじゃなくて、同じように思った女優さんは山ほどいますけどね。特に好きな人だったから、顔をじーーっと見てしまうんでしょう。もしかしたら私の気のせいかもしれないですが…。


 わずかな表情皺さえ気にする女優さんもいれば、一方で年取るがまま顔の皺を一切気にせず、思い切り顔をしかめたり、眉を上げたり、目をむいたり、大笑いしたりする女優さん(特にコメディで)を見ると、なんか清清しくなったりします。『デスパレートな妻たち』に出ているテリー・ハッチャーも40歳くらいだと思うけれど、表情皺がいっぱいでる。おでこにも皺が何重と出る。でも、愛らしい。それに身体はとても若々しくすばらしいプロポーション。いいなあと思った。


 数年前に『デブラ・ウィンガーを探して』というドキュメンタリー映画がありました。自らも女優であるロザンナ・アークエットが監督。ハリウッドでは40歳を過ぎた女優は生き残るのが大変。家庭と仕事の両立も大変…ということで、そういう女優たち40人以上をインタビューして回る映画です。映画としてどうのというよりも、素の女優さんたちがしゃべっているのを見るだけでも楽しいので、映画好きな人にはお勧めです。

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 その映画の中で一番カッコいいなと思ったのは、コーエン兄弟の大傑作『ファーゴ』でアカデミー賞主演女優賞を取ったフランシス・マクドーマンド。「ハリウッドの女優たちがみんな整形していつまでも若くいてくれれば、私はそのうち50歳の役を独り占めできるのよ(笑)」と言って笑っていた。美しさではなく実力で生き残っている女優さんならではの自信と余裕溢れる表情でした。


 20代中盤からは結婚するかどうかの選択、キャリアをどうするかの選択、その後40代前まで子供を生むか生まないの選択、そして40歳以降は整形をするかどうかの選択…?? 最後のはすべての女性が持つ選択ではないですけど。女たちは年代ごとに選択を迫られて悩んでる。男性にもそれぞれの世代で男性なりの選択肢をみつめて悩んでいるのだと思いますが。美しさを求められないのはいいなあ。


 といっても、映画男優ではぴっかぴかのイケメンさんたちなどは特に女性と同様、容姿にこだわる人も多少いますね。おじいさんになりきれないロバート・レッドフォードライアン・オニール、未だに容姿を気にしてる雰囲気がします。一方で、どこから見てもりっぱなジジイとなってバリバリ映画に出てる人もいる。ポール・ニューマンとか、(今は病気を患ってるみたいで心配だけれど)ショーン・コネリーとか、顔は皺皺だけど立ち姿は変わらないサム・シェパードとか、禿げ禿げながらも『マジソン郡の橋』で堂々とまっこう恋愛映画に出るクリント・イーストウッドとか。元イケメンでも、見事にジジイになってカッコよくいられる人はいいなあ。男性は年取るごとに味が出るような気がします。生き方によるけれど。イケメンじゃない人が年取ってすごくカッコよくなることもあるし。いや、むしろイケメンじゃなかった人ほど年取って渋い男のカッコ良さが出るような気も…。皺で魅力が増すんですよね。


 しかし、女性にとっては年取ってますます魅力的…ってなる人は少ない。ヴィスコンティ監督の『地獄に堕ちた勇者ども』で初めて見た美しい人、シャーロット・ランプリングなんかは、60歳になる今でも現役で、そしてきれい。カトリーヌ・ドヌーブも。イギリスやヨーロッパの女優はハリウッドの女優のように「若さ」を求められないからか、整形してる様子もない人が多いです。マギー・スミスとかジュディ・ディンチとかバネッサ・レッドグレーブとか。カッコいいババアたちがいっぱい。


 …と、なんか何を言いたいのかまとまりなくなってきましたが。好きな女優さんたちをババアになるまで見ていたいから、魅力を保ってほしいとも思うけれど、眉毛くらいは動いていてほしい! …ってことです。そんで、私自身もカッコいいババアになれたらいいな…。邪念を振り払うのだっ>自分。…と、なんだか浅くてくだらないことを、今日車を運転しながら考えていたのでした。たぶん、自分がそういう年齢になったからこんなこと思うんだろうなあとは思うけど(最近、ジムに通って筋力保つ努力を始めました)。


 そういえばジョディ・フォスターがアンチ・エイジングに関してこんなこと言ってました。


 「私は、負けることが決まっている戦いはしない」と。


 確かに…。老いに勝てる人は誰もいない。最終的には老いに敗北するわけなのですが。それでも、ほどほどには戦っていいような気もする…。飽くまでほどほどにってことで。うん。