小室みつ子 / 映画とかドラマとか戯言など

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『ローズ・イン・タイドランド』

★★★☆☆

ローズ・イン・タイドランド [DVD]

ローズ・イン・タイドランド [DVD]


 テリー・ギリアム監督作品。20年以上前に『未来世紀ブラジル』★★★★★でぶっとんで脳裏に張り付いて離れないまま、10年くらい前には『フィッシャー・キング』★★★★★で滂沱の涙を流したというか、ほとんど嗚咽状態に陥りました。テリー・ギリアムは私にとって追いかけたい監督のひとり。


 そのテリー・ギリアムが「アリス meets サイコ」と表現したこの映画。かなり前から見たかったのですが、やっとDVDを借りて見ました。うーん……確かに出てくる人出てくる人、サイコばっかりですよー(汗)


 以下ネタばれ


 …こ、これは。うーん。えーと、『世にも不幸な物語』よりもっともっと悲惨なんですが……。


 あまりにダークな内容に最初言葉も出ないというか…。『未来世紀ブラジル』のような理不尽な生理的恐怖感を抱かせてくれるものの、ブラジルのようなコミカルな部分はあまりない。ローズが生きるリアル世界こそが、このダーク・アリス(ローズ)にとっての不思議の国。両親はジャンキーで廃人。ネグレクトされてるローズが痛ましい…。映画はアリスのようにファンタジックな仮想世界には連れて行ってくれず、見る者の気持ちを救うどころかどんどん鬱な気持ちにしてくれます。


 そしてお父さんが連れて行ってくれたお父さんの実家がある田舎の町。果てしなく広がる草原(青々としたきれいなものではなく、枯れた雑草で覆われた褪せた黄色い草原)の向こうに立つ古い屋敷。…ここでローズは自由を取り戻すのか…と思いきや、いきなりお父さんがヘロインやったまま死んでしまう…。


 ローズは死んだお父さんにお化粧して上げたり鬘をつけてあげたりするものの、どんどん遺体は腐っていって、腹部が膨れ異様な匂いを放ち出す。ここらへんでも相当引きます。でもそれだけではなく、ローズが恋する近所の青年はロボトミー手術でも受けたらしく正気ではない。その母(?)もまた異様ないでたちだし、家に母親の遺体をミイラ化して復活を待っているというサイコな人。


 ローズが行くところに正気の人間がひとりもいない…。つらすぎる状況でローズが現実逃避のために作り上げた遊びもまたダークな味付け。首だけもげた人形を指に差して、ローズは彼女たちと腹話術で話をする。しかし、さすがテリー・ギリアム。この人形遊びがかなり映画的に映えてていい。映像もすばらしい。……でも話が暗すぎる…orz


 それだけではなく、ローズの性的な興味がどんどんエスカレートしていくのが怖かった。というか冷や冷やするような場面が多すぎて、これって、いいのー!? やばいんではないですかー?? と思うほど、犯罪的なシーンぎりぎりに私は思えました。エロいです…。いや、エロいのはいいんだけれど…。なにしろ少女ですから。表現がかなり危ない。個人的にはらはらして途中かなりドン引きしてしまいましたよ、テリーさん…。


 しかし魅力溢れる映像。テクニカルな描写にはうっとりします。さすがテリー・ギリアム。でも、ギリアム好きな人以外にはお勧めできない映画です。えぐ過ぎて推奨できません。『未来世紀ブラジル』が大好きな人にはいいかも。しかし、ローズ役の女の子の愛らしさはすごい。演技もすばらしかった。