小室みつ子 / 映画とかドラマとか戯言など

公式ブログからこちらに引っ越し。試用期間中です。

「シン・コジラ」邦画

 あまりに長いことブログをほったらかしにしていたら、たどり着くのに迷ってしまいました;; 映画もドラマも見るだけ見て、その場で忘れていく…。やはりまめに感想書きたいのですが、なかなか…。久しぶりに映画館で見た映画なので感想書きます。感想書くにはネタバレ必至なので、見てない方は読まないでください。

 「シン・ゴジラ」、評判良いですね。私もいろいろ楽しみました。映画の出来そのものの評価より、ゴジラに対する愛情とか熱意とかの形で感想が変わるかと思います。

 シンプルに「新しいゴジラが見たい!」と思って見た人にとっては、楽しい映画だと思います。作り手側の「新しいゴジラを作りたい!!」という情熱だけを受け止められる。そこが肝のような気がします。普通の映画感覚で見てしまうと、キャラ設定がどうとか、セリフが説明臭いとか、人物描写の浅さとか、いろいろ不満が出るかもしれないですが、私個人は、怪獣映画のゴジラではなく、一番最初のモノクロ映画で見た「ゴジラ」だけが好きなので、あのゴジラの出現を今の感覚でどう作ったんだろうという興味が一番でした。なので満足。

この古い古い映画、社会派映画のような真面目な作りで、怪獣モノとは一線を画していました。この映画で生まれたゴジラが後々世界中で愛される「ゴジラ」になったのです。それだけでも胸がいっぱいになる。長い間たくさんの人に愛されて、ハリウッドを含め作られ尽くしたゴジラを、改めて「出現」の瞬間に戻して映画化する。これだけでも魅力的です。というか、作り手にとっては大きな賭けだったと思います。


           ★★★★★  以下  ネタバレ注意  ★★★★★




 単に昔のゴジラを現代の技術を使って描いていたらたぶん不評だったでしょう。ただただ一点のみで、私個人は高く高く評価します。「形態が次々に変わって最後に自分が知っているゴジラになる」 これ! FFのラスボスのような感覚。第一形態で現れたゴジラは、「なんじゃこりゃ?」みたいなヘンテコな生き物。ギョロ目の蛇みたいなのが上陸して、「???」となる、それが歩きながら体液(?)をだらだらと流しながら変わっていて、「ああ、これがゴジラになるのか!」と思った瞬間、もう満足できました。すばらしい。FF好きだからでしょうか。このアイデアだけでも十分に賞賛に値すると思ってしまいます。やったね、と思いました。

 あとよかったのは、自衛隊が全面協力したことでできた映像でしょうか。実際に謎の巨大生物が上陸した時に、どういう方法で応じるか、考えさせられる点も良かった。政府の対応とか会議の様子は、なんだかぎくしゃくしているし、ステレオタイプな部分もありますが、対応する法律がない場合の混乱は想像できます。警察が対応するのか、自衛隊を出すのか、かなり迷うでしょうね。自国内であらゆる軍備を使うなんて、これを決断するはめになる首相にはなりたくない。…と、リアルに悩む映画ではないですけど。ウルトラマンだって怪獣と戦う時、そこらへんのビルをぶっ壊してる。リアルに考えたら死屍累々です。悲惨です。が、怪獣映画見てそれ考えないのはお約束。でも、「シン・ゴジラ」はやはりそこらへんも考えないといけない。

 未知の生物が突如街を破壊し始めたら…。政治的な動きも盛り込まずには描けない話。「なぜ東京を守るのか」という批判かわしのためにだけある記者同士の会話。「東京だけでGDPがこのくらいでー、経済的な重要性がー云々。だから東京は絶対に守るんだよー」とか、言い訳のセリフを盛り込んでいるのは、悩んだうえでの配慮として好意的に受け止められました。破壊される街の映像は迫力があったと想います。CGも良かったと想います。

 後半はツッコミどころ満載で、別な意味で楽しかったです。

ゴジラが止まっている間にあんなに用意できるの?
ゴジラが動き出して一歩進んだところに、在来線爆弾攻撃。…別な方向に動くかもしれないのに、何故それを考えた?? おもしろいけどw
ゴジラの口から冷却剤(でしたっけ??)を入れ込む作戦、ゴジラが倒れなかった場合はどうなるの??どうして倒れると思えたんだ。
・口から注ぎ込んでも、口は穴じゃないんだから、そのまま体に入るとは思えないんだけど…。
自衛隊と米軍の武器を使い果たした後で、科学の精鋭たちが考えたのが、めっちゃ手作り作戦でびっくり。 マグマ大使のゴアが地球を滅亡させる!と言って幼稚園のバスを襲うような感覚に近い(笑)

・どうでもいいけど、ルー大柴みたいなしゃべり方する、アメリカ大統領を目指している日系アメリカ人女性のキャラだけ浮いていたような…。あのキャラ、必要かな。おじいちゃんが被爆者という設定で、国連の核攻撃決定の重さを訴えるためとは思うんだけど、ちょっと違うような気がしました…。

・最初から、閣僚会議だかで、「未知の生物かもしれない!」って叫んでいた男の人は、どういう根拠でそう思ったのか、私が見逃したのか、未だに謎です。なんか、ひとりで妄想に走っているようにしか見えなかった; 実態を見て、みんなが驚愕するならわかるんだけど…。まあ、細かいツッコミですね、すみません。

…などなど、ツッコミ入れるのも楽しい楽しい時間でした。批判のツッコミではありません。あくまで愛情のあるツッコミで、楽しんでいるからこそ出てくるものです。はい。

 映画全体に「新しいゴジラを作りたい!」という熱い想いが伝わって来たし、実際に新しいゴジラだったので、それを見られただけでも十分ごっつぁんな気分です。

 追記:「破壊は再生の始まり」みたいな言い方(正確なセリフは忘れましたが)は、うーん、ちょっと間違うと危ない思想にも思えます。全部壊しちゃえば、最初からやり直せるみたいな感じにも取れるので…。若い政治家の男性と女性が最後に語り合うところは、正直どうでもよかったです。ごめんなさい。


[戯言] 【11月2日 追記】

ふと読み直して、ゴジラを倒して、倒れている間に特殊な液を入れる作戦の不自然さの元がわかったような気がしました!

あの瞬間から、形態を変えるすばらしいゴジラはいなくなり、制作側の想像するゴジラは、模型のゴジラとそう変わりない「怪獣」になっていたのではないかと…。思考がそこで止まっているような感じ。

 もし、新しいゴジラを、「ジュラシックパーク」のTレックスみたいなものと想像していたら、あんな作戦は考えない。在来線爆弾で倒れても、Tレックスなら躍動的にすぐに立ち上がって暴れだすでしょう。そのまま倒れてしばらく動けない、口は開きっぱなしの怪獣???  ゴジラとは、なんなのか? ゴジラの動態に対しての想像力がどこにもない。だから、ああいう作戦が浮かんだのかなと思いました。

 もちろんTレックスよりも何十倍も大きな怪獣であるゴジラに、Tレックスのように走られても困るのですが…。ずっしり、ずんずん、ゆっくり、ずんずん、そういう動きしかゴジラに対して想像できない、これは私を含め、みんながそうなんだなあと、今ふと思ったので、書いてみました。