小室みつ子 / 映画とかドラマとか戯言など

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『マイ・ボディガード』

★★★★☆

マイ・ボディガード プレミアム・エディション [DVD]

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 デンゼル・ワシントンダコタ・ファニングが出ていて、タイトルが『マイ・ボディガード』で(ケヴィン・コスナーホイットニー・ヒューストンの甘々なアクション映画『ボディガード』をどうしても思い出す)、なんか軽そうな感じがして結局見る気が起こらなかったこの映画、やっぱりデンゼルだから見ておこうと今頃借りてきました。で、愕然。


 …これは、邦題がひどすぎです。ダコタ・ファニング目当てとか、デンゼルと彼女のほのぼのした交流があるお気軽ハッピーエンド映画を想定して映画館に見に行った人たちは、相当ショックを受けたのでは…。この邦題で違う人たちを呼び込み、私のようなストライクゾーンの人間を遠ざけてしまったと思う。


 なにしろR−15も納得のとても残酷な映画です。冒頭の「南米では60分に1人誘拐されて、そのうちの70%が生きて戻らない」というナレーションだけでも怖い。 …でも、とってもいい映画です!!デンゼル・ワシントンがすばらしい。ダコタ・ファニングもすばらしい。なんでこんないい映画が埋もれてるの!?と驚愕したほど(単に自分が興味を持たなかっただけかもしれないけど。それを悔いました)。


 原題の『Man on Fire(燃える男)』のまま邦題にすればよかったのに…。人を殺すことが仕事だった男クリーシー(デンゼル)がそれを悔いて(というかアル中でほぼ人生を捨てていた)南米に行き、そこで就いた仕事がお金持ちの娘、ピタ(ダコタ・ファニング)のボディーガード。人を殺してきた男が初めて人を守る仕事をする、その設定だけでもぐっと来る。最初は寡黙で人嫌いでかたくなだった男が、少女と毎日交流することによって少しずつ癒されていく。少女は無垢にクリーシーを慕い、クリーシーも少しずつ心を開いていって、いつの間にか自分の娘のように愛するようになる…。


 前半の物語はほぼダコタ・ファニングの演技力と愛くるしさに担っていたと言っていいほど、その過程がとても自然に見ている側にすんなりと入ってきます。このふたりの間に育まれる絆とか愛情とかがとてもうまく描かれていた。やはりダコタ・ファニングは恐ろしいほど演技がうまいです。


 後半は壮絶な復讐劇。デンゼル・ワシントンが復讐鬼となって、次々と誘拐に関わる悪い奴らを拷問し、殺していく。暴力描写が苦手な人は見られないくらいグロいかも。でも、私は、デンゼルに完璧に感情移入してるんで、全く気にならなかった。幼い子供たちを金目当てに誘拐したり殺している人間たちに、同情なんてする気もない。デンゼルが命を投げ打って守り、復讐するすべての過程に気持ちがシンクロしてました。私がデンゼルの立場でも同じ気持ちになる。あの子を愛してしまうだろうし、あの子を失ったら狂いそう…。


 トニー・スコット監督、『トゥルー・ロマンス』以来、久しぶりにいいなあと思いました。映像が若々しい。テンポがいい。デンゼルは何をやってもカッコいいけれど、今回のこれはハマり役だと思う。デンゼルと共に私も前半は心がほだされて癒されて、後半は心が怒りで燃えましたよ。ああ、この映画を単なる甘いハリウッド映画だと思っていた私は大バカです。すごくいい映画でした。エンディングのオチはああじゃなかったほうがもっと心に染みるかもしれないけど、あれはあれで、心が救われるからいいのかな…。


 とにかく、公開当時もっともっと絶賛されてもいいはずの映画だと思いました。残酷なシーンは多いけれど、韓国映画オールド・ボーイ』の最後のほうのシーンとか、『SAW』とか見られる人には全然OK。ずっとマイルド(?)です。それより、怒りに燃えたクリーシーの男気に武者震い!!