小室みつ子 / 映画とかドラマとか戯言など

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「マージン・コール」最高

 また立て続けに映画を観て朝を迎えてしまいました。最近これが続いてて、生活時間帯がむちゃくちゃ…。昔の頃のようにWOWOWやムービー・プラスなどの映画チャンネルで、面白そうな映画を片っ端から録画しておいて、一気に見る毎日です。

 ゆうべ見たのは、「ラスト・エクソシズム」と「スピーク」という、偶然にもどちらもドキュメンタリータッチで描くホラー。どっちも、全く怖くないし、ハンディカメラの動きと画面の暗さに少し見るのがつらかった。


ラスト・エクソシズム」★★★

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 「神を信じることは悪魔の存在も信じること、悪魔の存在を信じれば神を信じるしかない」ということが、途中で理解できてくる。クリスチャンじゃない私には、悪魔の怖さが全くわからないので理解するだけですけど。脚本はすっきりまとめられてていいなと思うのだけど、映像がドキュメンタリーとしての映像なのでフラストレーション溜まります。この手の映画なら、「エミリー・ローズ」だけは怖かったです。あちらは悪魔ではなく病気だと思うけれど…。しかし何故、エクソシズムが描かれるのはほとんどが田舎町なんでしょうかね。田舎ほど保守的だし敬虔な宗教信者が多いし村社会が構成されるからでしょうか。


「スピーク」★

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 一言、「これはひどい」でした…。いやあ、怖くないし、もうホラーの定番の筋書きだし…。ドキュメンタリーとして撮っていて、経過時間もそのままという手法もすでに「ブレアウィッチ」とか他のでもやってるし…。ドキュメンタリータッチで撮ってるのに、霊に乗り移られた人の化粧が濃すぎるし、演技と表情が大げさで「怖がらせるぜー」ってわかるのが見ていて恥ずかしくなった…。制作した人たち、ごめんなさい。


 で、今回のタイトル映画、打って変わってウォール街の映画。これはもうすばらしい!! 俳優陣見てるだけで涎出るくらい、眺めるだけでも気持ちがよくなる映画です。(単に私が好きな俳優さんがてんこ盛りだからかも)

マージン・コール」★★★★★

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 ケヴィン・スペイシーポール・ベタニージェレミー・アイアンズスタンリー・トゥッチザカリー・クイントサイモン・ベイカーデミ・ムーアと、すごい俳優陣!! なのに、これインディペンデント映画なんですね。日本では劇場未公開。まあ話が淡々と進んでいくし、エンタテイメントとしての旨みがないから公開しても無駄だったかもしれませんが、私にとっては最高の映画でした。今もとってもいい気分。

 初監督・初脚本のJ・C・チャンダーさん、すごいっす! インディーなのに、何故これだけいい俳優たちを集められたのか不思議。サンダンスでプレミア上映して、アメリカでの評判はかなり良かったようです。私も、ウォール街関連・金融危機の映画の中で、一番好きかも。最近見た「カンパニー・メン」のような、感情がいっぱい溢れる悲惨な映画でもなく、本当に淡々とした演出。だけど、静かに静かにとてつもなく恐ろしいことが始まるという緊迫感がじわじわと伝わってくる。そして、映画の大事な要素、ちょっとした笑いも散りばめられ、俳優さんたちが輝ける見せ場と台詞がきちんと用意されてる(どのキャラも大事に描くいい脚本ってことです)。

 ケヴィン・スペイシーのすばらしいこと。実はひどく孤独な境遇(隠してはいるけれど)、誰よりも情緒的で倫理観もまだ保っていて人望も厚い役がハマってます。スタンリー・トゥッチが、恰幅良くなってていい感じ。エンジニア時代に作った橋のことを話す時に、人のためになるdecentな仕事への敬意と、お金を扱う仕事への劣等感を感じさせるシーンがすばらしい。ふたりとも大好きな俳優さんです。

 声・アクセントだけ聴いただけでも、おいしいご馳走なのに、姿までおいしいジェレミー・アイアンズを見れて、モンク姿じゃないポール・ベタニーも見れて(この人も言葉のアクセントと話し方が素敵、やっぱりブリティッシュ訛りがいい)、それから「メンタリスト」のサイモン・ベイカーがちょっと好きになれた(あの甘い顔が苦手でした…)。そして、ドラマ「ヒーローズ」とスタートレックの新スポック役ですっかり人気者になった顔の濃い人、ザカリー・クイントもいい感じです。デミ・ムーアだけは、押しの強いキャリア女性って感じでもなくミスキャストな気がしましたが。

 何より、低予算で淡々とした話の運びでありながら、メインのキャラクターがそれぞれに十二分に味を出せる台詞と脚本を丁寧に書いた新しい監督さんの力に圧倒されました。この人にこれを演じさせたかーという部分も脱帽。

 そして、内容的にも、サブプライムローン問題で、ローンを住宅ローン担保証券MBS)に証券化させて売っていた証券会社が、MBSが破綻するとわかって一夜で切り抜けようとするリアルな設定。解決方は詐欺のような方法しかなく、それを部下たちにさせることに心を痛める上司(スペイシー)がいるだけで少し安らげる。このMBSによって元々の債権者である銀行はなんら困らない形式になっていて、格付けも裏でお金が動いてAAAになっていたりと、世界を巻き込んだ金融危機の後も銀行は合併してより強大になったと聞きます。お金を扱う仕事内容は未だに理解不能

 お金を動かすだけで目も眩むような収入。いくらあっても足りない程お金遣いも荒い。プライドも高い。彼らの人生観は普通とは違う、もしくは狂っている…という批判的であり自己反省的なところは「カンパニー・メン」の方が出てますが、この映画の、リアルに発狂しそうな状態を前にして恐ろしい静けさの中で動く証券マンたちだけの話、そしてそれを演じる俳優陣の会話だけで、私はたんまり楽しめました。俳優たちと脚本の勝利。

以下ネタばれ

 最後の場面が人によっては理解できないかもしれないですが、ケヴィン・スペイシーが、最後に2年契約をオファーしてくれたジェレミー・アイアンズに一度断った後に、「やはりやる。理由は自分でも驚くが、金だ」と言います。それまで一番仕事に愛がありそうだった彼が結局「お金」を選んだのが意外ですが、その答えが最後のシーン。

 愛犬の死骸を家の前の芝生に埋めるために、スコップでひたすら穴を掘る。灯りが付き、出てきた女性が「もうここはあなたの家じゃないのよ」と言う。ここでやっと理解。ケヴィン・スペイシーは離婚していて、奥さんは未だに豪邸に住んでいる。慰謝料とかいろいろ必要なのね。だから、お金を選んだってことか…とわかります。愛犬の死に一番打ちひしがれている彼が地面を掘り続ける音が続く。まるで自分の墓を掘っているかのように…。いい終わり方です。お見事。